【教員インタビュー】叶 深 教授(理学研究科)

 大学院理学研究科化学専攻有機物理化学研究室所属の叶深(ヨウ・シン)教授に話を伺った。叶教授は電極触媒や細胞膜などの機能性物質の境界面での化学反応を解明する界面物理化学の研究を行っている。




―化学研究者を志したきっかけは

 実は私は、高校時代には化学を受験教科としていたためそれほど好きではありませんでした。しかし、大学の学習においては高校で求められた「反応の暗記」が「反応や物性の理解」へと変わっていきます。ここに化学の楽しさを覚えました。今でもこの楽しさは変わらず、化学反応を通じて自然界の素晴らしさが見える感動は飛び切りのものです。

―理学、とりわけ化学の役割は

 現在日本では、昔の「大量生産・大量消費社会」にとって代わって「新しい知識により創造する循環型社会」の実現が求められています。この傾向は、電池の歴史を振り返ると見えてくると思います。当初困難とされていたリチウムイオン二次電池が、多くの化学者の地道な基礎研究により、ようやく実用化されました。このように化学では「新しい知識」の創出と蓄積という理学的要素が非常に重要であり、そこで化学者が主要な役割を果たしていくものと考えられます。

―叶教授の研究分野の一つであるリチウム空気電池とは

 現在広く使用されているリチウムイオン二次電池が、材料構造の制限でこれ以上の電池容量密度の増加が望みにくい問題に直面しており、その解決のために開発されている新しい二次電池です。この電池は負極にはリチウム金属、正極には酸素分子を用いて電池反応を起こします。今までの電池と比べると、極めて高いエネルギー密度が実現でき、電気自動車への応用などで将来エネルギー問題を解決する一手となるでしょう。ただ、この電池は現状では正極の高い充電過電圧といった多くの問題を抱えており、その解決に向けて取り組んでいます。

―理学部のオープンキャンパスでの企画は

 オープンキャンパスにおいて、理学部化学科は体験授業や公開実験などのさまざまな行事を企画しています。その中に、今年は研究室見学ツアーも設けています。「百聞は一見にしかず」ということわざに言われるように、高校化学の授業では見られない最先端の化学研究の現場を自分の目で確かめてほしいです。
 日頃、高校生との日常的接点が少ないため、いかにして皆さんに化学の魅力を伝えていくか、大学側にいる我々教員もいつも苦慮しています。化学研究室の雰囲気を感じながら、化学研究に対するさまざまな質問を先生や先輩らに積極的に聞いてほしいと思います。

―高校生にメッセージを

 このたび、オープンキャンパスという貴重な機会に高校生の皆さんに会えることを楽しみにしています。これを機に皆さんも興味を引かれたものについての探求心を培ってください。これから大学受験を控える高校生の皆さんには、オープンキャンパスを進路先の大学の情報収集に重要なチャンスとして活用してほしいです。

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